キャラクター / 2026-09-13

今日は、どの影を追う?

たくさんのことに気づき、すぐ動けるミオン。追うものを一つに決めることで、持て余していた体力を誰かのためや新しい楽しみへ使えるようになっていきます。

Main Actor ミオン / Speaker —

キャラクターミオン

水面で何かが光った。

「あっ、気になる」

ミオンは考えるより早く、枝から飛び立った。

青い翼が水へ向かう。その途中で、少し離れた場所に別の魚影が見えた。

「こっちも大きそう」

身体の向きを変え、二つ目の影へ飛び込む。

水から顔を出すと、今度は風で葉が大きく揺れた。

「あっちには何があるんだろう」

魚を探しに来たことも忘れ、森の方へ飛んでいく。けれど途中で、水辺に見たことのない波紋が広がった。

また気になって、すぐに戻る。

魚影や波紋へ次々と向きを変えるミオン
魚影や波紋へ次々と向きを変えるミオン

ミオンは、たくさんのことに気づける。水面の光、風で揺れる葉、遠くの音。気づいたら、すぐ動けることも強みだった。

でも、その強みが時には弱点になった。気になるものを全部追おうとして、どれも選べない。本人も、そんな自分に少し困っていた。

夕方。木々を映した水面が、深い緑から金色へ変わり始めた。

ミオンは石の上で息を切らしていた。

「あれ……ぼく、今日は何をしに来たんだっけ?」

ミオンとハクトは、これまで挨拶を交わすくらいで、ゆっくり話す機会はほとんどなかった。

その時、少し離れた木の陰から声がした。

「いっぱい気になるものがあったんですね」

気づくと、そこにハクトが立っていた。

責められると思っていたミオンは、少し意外そうな顔をした。

ハクトは、それ以上説明しなかった。

「……ところで、本当は何を追いかけたかったのでしょう」

ミオンは水面を見た。

たくさんの影が動いていた。でも、自分がどれを追っていたのかは分からなかった。

夕暮れの湖で疲れ切ったミオンと、気づくとそこにいたハクト
夕暮れの湖で疲れ切ったミオンと、気づけば隣にいたハクト

ハクトは立ち上がる前に、ミオンへ声をかけた。

「明日、よければ僕の家に来てください。渡したいものがあります」

翌日。ミオンがハクトの家を訪ねると、ハクトは背負っていたバッグから、小さなボイスレコーダーと片耳イヤホンマイクを取り出した。イヤホンマイクは一つだけ。耳につける向きを変えれば、右にも左にもつけられる。

ハクトがバッグから防水のボイスレコーダーと片耳イヤホンマイクを取り出し、ミオンへ渡す
その日にバッグから取り出した道具をミオンへ渡すハクト

ハクトは説明を長く続けず、小さなメモを添えた。

前の夜に、明日したいことを短く録音する。
片耳イヤホンで、朝に聴き返す。
レコーダーとマイクは防水。水辺でも気にせず、本当にやりたいことを探していい。

その夜、ミオンはすぐに試した。

「明日は水辺で……魚を見て、森の音も聞いて、それから新しい道も……」

翌朝に聴き返してみても、結局、何を一番したかったのか分からなかった。

次の夜も、録音は長くなった。

気になるものを全部しゃべり続け、途中で別のことを思い出し、何をしたいのか分からないまま終わった。

前夜、片耳イヤホンマイクで長い録音をするミオン
ハクトから受け取った道具で、前夜の声を録音するミオン

上手くできない日が続いた。

それでもミオンは、何度もマイクへ戻った。

ある夜、ミオンは短く録音した。

「明日は、朝ごはんを探す。最初に見つけた魚影を、一つだけ追う」

翌朝。水辺へ出る前に、片耳イヤホンで前夜の自分の声を聴いた。

朝、自分の録音を聴いて一つの魚影へ照準を定めるミオン
朝、自分の録音を聴いて一つの魚影へ照準を定めるミオン

枝へ止まると、一つの魚影を見つけた。

すぐ横にも、別の影が動いた。森の奥では、聞いたことのない音がした。

ミオンの身体は、もう飛び出しかけていた。

「ちょっと待って」

ミオンはもう一度、前夜の録音を再生した。

「追いたいのは、最初に見つけた影」

ほかのものが気にならなくなったわけではない。

それでもミオンは、一つへ身体を向けた。

「全部じゃなくて、今日はこれを見る」

水へ飛び込む。

今度は途中で向きを変えなかった。水の中へくちばしを伸ばし、狙っていた一匹をきちんと捉えた。

狙った一匹をくわえ、水面から上がるミオン
狙った一匹をくわえ、水面から上がるミオン

水から上がったミオンは、魚とボイスレコーダーを交互に見た。

「まだ、動ける」

狙いを一つに決めていたから、驚くほど早く動けた。目移りしながら飛び回っていた時間がなくなり、持て余していた体力にも、使い道を選べる余白が生まれていた。

これまでは、余った力でまた別のものへ飛びついていた。でも今日は、水辺の片づけを手伝うことも、帰ってから好きな羽根の形をゆっくり眺めることもできる。

体力が増えたわけではない。前の夜に決めた照準へ、朝の自分が戻れたから、ひとつの行動の効果をきちんと受け取りながら、次の時間まで力を残せるようになったのだ。

ミオンは、気になるものをなくしたわけではない。ひとつに集中することで、誰かのために動く時間も、自分の好きなことを楽しむ時間も、自分で選べるようになっていた。

あなたへ、ひとつの問い

気になるものすべてへ動くことで、本当に向かいたい場所を見失っていませんか。明日のあなたが、最初に狙いを定める一つは何でしょう。

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気づきを、必要な人へ届ける。

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